平成20年度函館音楽協会春季定期演奏会・平成19年度函館音楽協会奨励賞記念演奏会

20080517.jpg平成20年度函館音楽協会春季定期演奏会・平成19年度函館音楽協会奨励賞受賞記念演奏が5月17日(土)18時00分より函館市芸術ホールにて開催されました。リコーダー、声楽、ピアノ、クラリネット、打楽器、ヴァイオリン、2台ピアノ等、13ステージが披露されました。当日は、400名ものお客様がご来場になり、盛会でした。
講評を宍戸雄一副幹事長にお願い致しました。



平成20年度 函館音楽協会 春季定期演奏会 を聴いて
副幹事長 宍戸雄一

 今年は奨励賞1名のため、久しぶりに受賞者のステージも一緒の演奏会でした。
多彩なプログラムで構成され、上質な音楽で観客の方々にも充分楽しんでいただけたと感じました。
 プログラムの最初にふさわしいリコーダー5重奏「スペイン組曲」は、パイプオルガンを彷彿させる演奏でした。卓越したテクニックとブレスコントロールに支えられた演奏はほどよい緊張感の中にも暖かい音色で魅了させられました。立ち位置の関係か内声が聞き取りにくかったことが惜しいです。
 第2ステージ。堀川さんのソプラノ独唱は明るく透き通るような声で、とても清楚。高音の安定した発声と表情のしなやかさが今後の目標でしょうか?
 第3ステージ。松尾さんのピアノ独奏。とてもポピュラーな名曲で観客の中にはほっとされた方もいたのでは?全体に小さくまとまった感じ。ミスを気にしていたのでしょうか?
 第4ステージ。山本さんのピアノ独奏はしっかりしたタッチで緻密な演奏。いぶし銀のような輝きを持っていましたが、多少情感が淡泊に感じました。音色と表情の工夫を期待したいです。
 第5ステージ。夏井さんのピアノ独奏。旋律と音に力強さを感じました。この曲に関してはハーモニーの響きの薄さが気になりました。主張の強い演奏なので今後が楽しみです。
 第6ステージ。波多野さんのクラリネット独奏。ブラームスの名曲で玄人好みの深みのある曲だけに表情が難しいです。甘く柔らかい音色、力みのない演奏で好感が持てましたが、さらに強弱のコントラストと旋律の揺れに積極さがあればと感じました。
 第7ステージ。三浦さんのジョリベ作曲 打楽器協奏曲より。ピアノも打楽器も合わせの難しい曲でした。タイミングもさることながら互いの音量のバランスの取り方がとても難しく、緊張感のある演奏でとても楽しめました。吉本君のアンサンブル能力は素晴らしいです。
 第8ステージ。ヴァイオリンの合奏はコンマスの嶋田さんの積極的なリーダーシップによって、メリハリのある演奏でした。ただ各自の力量による声部のバランスやアインザッツのばらつきが気になりました。
 第9ステージ。亀井さんのピアノ独奏。大変情緒あふれる演奏で終始安定した音作りは見事でした。欲を言えばディナーミクやルバート等で動きや幅のある演奏をもっと表現できたらと感じました。
 第10ステージ。島本さんのピアノ独奏。濃淡の表情が豊かに感じさせられた演奏でした。細かい動きもきらびやかで、重さ軽さをうまく表現したスケールの大きい演奏で見事でした。ただ、ペダルの使用に時々違和感を覚えたのは解釈の違い?
 第11ステージ。北條さんのソプラノ独唱。一曲目は少々音程に不安定さを感じましたが、響きが当たったときは素晴らしい。二曲目は発声も安定し、激しい表情の動きも見事にクリアして大変ドラマチックでスケールの大きい演奏となりました。ピアノの堀内さんも色彩感あふれる音色で歌の魅力を十分引き出した演奏でした。
 第12ステージ。野呂ご夫妻による2台のピアノによる演奏。「ロマンス」はゆっくりと流れる中、毅然としたリズムに支えられ、朗々と歌われた演奏はとても印象に残りました。「タランテラ」は一変して3連符の激しく細かい動きの中に、テンポのルバートが随所に現れ、アンサンブルが非常に難しいにもかかわらず息のあった演奏で、合わせの醍醐味を堪能させて貰いました。
 最後は奨励賞受賞記念演奏。受賞者 岩平さんのクラリネット独奏。一曲目「クラリネットとピアノの為の二重奏曲」は明るくメリハリのきいた表情豊かな演奏。互いの旋律ラインを意識したアンサンブルは見事でした。二曲目「リゴレット・ファンタジー」は最後を飾る素晴らしい演奏でした。高度なテクニックを要求されるフレーズやカデンツ・リズム・テンポの変化を見事にクリアし、最後は情感の高まりを一気にモルト・アッチェレランドで華々しく締めくくりました。俊敏で切れ味がよく、時にはソリストをリードする伊藤さんのピアノは、演奏をさらに説得力あるものにしていました。今後岩平さんには音色の追求と、音楽的に深みのある曲にもチャレンジして貰いたいと願っています。
 最後に全体通して感じたことがあります。独唱等も含めアンサンブルのバランスが気になったことです。リハやゲネプロでどなたかに聴いて貰うとか、客席からMDなどで録音し、会場でプレイバックするなどして、立ち位置や音量のバランスを工夫することで演奏効果が上がるのではないでしょうか。



■プログラム/
ブレスゲン:スペイン組曲/オーク・リコーダーアンサンブル 岡部浩美(ソプラノリコーダー)、井田恵子・源田由紀子(アルトリコーダー)、三浦大和(テナーリコーダー)、佐野道子(バスリコーダー)
プッチーニ:太陽と愛、そして小鳥は(子守歌)、愛の短い物語/堀川智美(S)、畑中佳子(p)
ショパン:即興曲 第4番 嬰ハ短調 Op.66/松尾宏美 (p)
ショパン:バラード 第3番 変イ長調 Op.47/山本由希 (p)
リスト:巡礼の年 第2年 イタリア~ペトラルカのソネット 104番/夏井絵里子(p)
ブラームス:ソナタ 第1番 ヘ短調 Op.120-1~第1楽章、第4楽章/波多野美紀(cl)、安田幸恵(p)
ジョリヴェ:打楽器協奏曲~第2楽章、第4楽章/三浦浩平(打楽器)、吉本有佑(p)
グリーグ:ホルベルク組曲~前奏曲、サラバンド、ガヴォットとミュゼット、アリア、リゴードン/嶋田利子・石黒浩治・山本美和子(1st vn)、浜岡元子・前田由季・松尾嘉子・福中香織・中野優香・杉本亜希・安間邦雄・渡辺健太 (2nd vn)、田中信・丸山徹・小関久美子(3rd Vn)、宮入健郎(p)
ショパン:バラード 第4番 ヘ短調 Op.52/亀井久美子(p)
フランク:プレリュード、コラールとフーガ~フーガ/島本久美子(p)
ベッリーニ:私の偶像よ、《清教徒》~あなたの優しい声が/北條美恵子(S)、堀内由美子(p)
ラフマニノフ:組曲 第2番 Op.17~Ⅲ.ロマンス、Ⅳ.タランテラ/野呂麻紀(第1ピアノ)、野呂佳生(第2ピアノ)
平成19年度 函館音楽協会 奨励賞受賞記念演奏
ブルグミュラー:クラリネットとピアノの為の二重奏曲 変ホ長調 Op.15、バッシ:《リゴレット》の旋律による演奏会用幻想曲/岩平尚子(cl)、伊藤亜希子(p)
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プログラム(pdf)