10/9 平成21年度 函館音楽協会 秋季定期演奏会

img018.jpg平成21年度函館音楽協会 秋季定期演奏会が10月9日(金)18時30分より函館市芸術ホールにて開催され、第Ⅰ部はアニバーサリーな作曲家たちがテーマ、第Ⅱ部は映画に登場したクラシック音楽集のステージで、弦楽四重奏、チェンバロ、声楽、ピアノソロ、2台ピアノなど11ステージが披露されました。
なんてったってクラシック Part2
■日時/2009年10月9日(金) 開場18:00 開演18:30
■場所/函館市芸術ホール
■料金/一般1000円、学生700円
■主催/函館音楽協会



秋季定期演奏会 
~なんてったってクラシック~Part2
佐々木 茂

第1部はアニバーサリーな作曲家たち。オープニングは生誕100年の越谷達之助「初恋」が北條美恵子によって歌われた(ピアノ堀内由美子)。以前に調べた資料によると、昭和22年の北海道新聞に[無名作曲家越谷達之助(29才)の啄木に寄せて歌える連曲15曲、奥田良三歌う。奥田良三音楽会、6月24日、青柳小¥30円]とある。当時無名の作曲家、越谷達之助はこの曲で今ではすっかり有名である。以前、NHKの名曲アルバムでこの曲を年老いた奥田が歌っていた誼も解ける。原譜の冒頭にAd ribitumと記されている。どうやら楽譜どおりでなくフレーズごとの間合いを自由にとって(伝統音楽的に)歌えということらしい。豊かな声量を持ち前とする北條であるが、さすが、この曲においては声を抑え、情感豊かな表現に徹していた。
続いて生誕200年のメンデルスゾーンの「ロンド・カプリチオーソ」作品14。当時のピアニストが好んで使っていたピアノテクニックをまとめ、細部において洗練された技巧が要求されるこの秀作を西 貴子が弾いた。この人のピアノを聴くのは確か2度目だが、何より音色が美しい。序奏部ホ長調のテンポ設定は様々だが、西は比較的あっさり目のテンポで弾き、後半カプリチオーソは狂想曲らしい洒脱さを心がけていた。
3番手は没後200年のハイドンの弦楽4重奏曲「セレナード」作品3-5を函館市芸術ホール管弦楽団の面々(賛助)が演奏した。しかし、この作品3の6つの弦楽4重奏はすべて偽作。現在ではハイドンの信奉者であるホーフシュテッターの作品であることが明らかになっている。ジャンルとしての弦楽4重奏を確立し、交響曲やソナタ形式を生んだ大作曲家ハイドンは未だモーツァルトの影に埋もれている感あり。しかし最近、カザルス弦楽四重奏団の現代的ハイドンを聴いた。今年を契機に再評価の到来を予感する。
続く2つのステージは生誕350年のパーセルと没後250年のヘンデルのアリアを佐藤朋子と徳永ふさ子が歌った。パーセル「ディドとエアネス」はイギリスで初めての本格的オペラ。佐藤の歌うディドの辞世の歌「私が土の下に横たわるとき」の劇的表現に思わず涙した。続く「リナルド」はロンドンで大成功を収めヘンデルが活動の本拠をイギリスに定める契機となった曲。このアリア「私を泣かせてください」と徳永が歌った歌劇「セルセ」の「ラルゴ/オンブラ・マイ・フ」はテレビのCMなどでつとに有名。「ラルゴ」は世界で始めて電波に乗って放送された音楽だそうだが、旋律素材は実はホノンチーノという人のもので、ヘンデルの独創ではないとされる。歌劇「ジューリオ・チェーザレ」はジュリアス・シーザーのことだがヘンデルのオペラの中で一番上演頻度が高い作品。徳永はレチタティーボの歌唱に長け、弦楽との細かいアーティキュレーションに気配りした。両人のステージで通奏低音(チェンバロ)を担当した森 洋子のつぼを心得た演奏が光った。
第二部は「映画に登場したクラシック音楽集」と題して7曲が演奏された。自分は「戦場のピアニスト」以外、ここに登場する映画を観ていないのでコンセプトが体感できなかったが、全ておなじみの曲、おいしいところのオンパレードに聴衆も大満足。ショパンを弾いた石田雅代、堀内由美子、木村雅子、カルメン・パラフレーズを弾いた畑中佳子(石田と連弾)、「トスカ」を歌った北條美恵子(ピアノ堀内)、それぞれのステージに大きな拍手が沸き起こった。欲を言えば、影マイクでの解説だけでなく、もうひとつ演出上の工夫があっても良かったかも知れない。映画音楽にはやはりショパンが断トツか。「カルメン」以外はすべて短調の曲だったことも発見であった。(函館音楽協会 評議員)



生誕200年の記念に

西 貴子

秋の定期演奏会は「なんてったってクラシックPart2」と題して、アニバーサリーな作曲家と映画に登場した音楽というテーマでした。
 今回選んだメンデルスゾーンは、ピアノ作品としてはどちらかといえば地味な存在ではないでしょうか。演奏会のメインに取りあげることは多くはないと思います。私自身、選曲候補にあがりつつも結局は見送るということを、今までに何度もくりかえしていました。
そのような中で、生誕200年の記念の年に真剣に向き合う機会を得ることができました。新たな方向から取り組むことで気づいたこともあり、今後に生かしていきたい思います。
 最後に、この演奏会を通じ多くの人との出会いがありました。足を運んで下さった聴衆の皆様をはじめ、担当幹事、関係者の方々に心から御礼申し上げます。
 本当にありがとうございました。
■プログラム
第Ⅰ部 アニバーサリーな作曲家たち
石川啄木 作詞 越谷達之助(生誕100年):初恋/北條美恵子(S)、堀内由美子(p)
メンデルスゾーン(生誕200年):ロンド カプリチオーソ/西 
貴子(P)
ハイドン(没後200年):セレナード 作品3-5/渡邉拓也(Vn)、嶋田信勝(Vn)、遠藤幸男(Va)、菊地加緒理(Vc)
H.パーセル(生誕350年):歌劇「ディドとエアネス」私が土の下に横たわるとき
ヘンデル(没後250年):歌劇「リナルド」私を泣かせてください/佐藤朋子(Sop)、渡邉拓也(Vn)、嶋田信勝(Vn)、遠藤幸男(Va)、菊地加緒理(Vc)、佐藤圭祐(Cb)、森 洋子(cem)
ヘンデル:歌劇「セルセ」 なつかしい木陰よ
ヘンデル:歌劇「ジューリオ・チューザレ」つらい運命に涙はあふれ/徳永ふさ子(Sop)、渡邉拓也(Vn)、嶋田信勝(Vn)、遠藤幸男(Va)、菊地加緒理(Vc)、佐藤圭祐(Cb)、森 洋子(cem)
第Ⅱ部 シネマ・オン・クラシック ~映画に登場したクラシック音楽集~
映画「ハンナとその姉妹」
J.S.バッハ:チェンバロ協奏曲 第5番ヘ短調より第2.3楽章/森 洋子(cem)、弦楽アンサンブル 
映画「戦場のピアニスト」
ショパン:ノクターン嬰ハ短調 遺作/石田雅代(P)
映画「赤い靴」
ショパン:ワルツ Op.64-2
映画「愛情物語」
ショパン:ノクターン Op.9-2/堀内由美子(P)
映画「がんばれベアーズ」「永遠のマリア・カラス」「ウォーターボーイズ」
ビゼー:カルメン前奏曲/石田雅代(第1ピアノ) 畑中佳子(第2ピアノ)
映画「永遠のマリア・カラス」「マリア・カラスの真実」「コピーキャット」
プッチーニ:歌劇「トスカ」歌に生き恋に生き/北條美恵子(S)、堀内由美子(p)
映画「砂の器」
ショパン:エチュード Op.10-12 ハ短調「革命」/木村雅子(p)
音楽協企E001.JPG音楽協企E002.JPG音楽協企E005.JPG音楽協企E010.JPG髻ウ讌ス蜊比シ・髮・粋.JPG