追悼・清水信勝先生

shimizu_03清水先生が昭和47年に会長に就任されて以来、20余年間に積み上げられた実績は多岐にわたります。「ゼミナール」、「学生コンサート」、「新人演奏会」などの新規事業を立ち上げ定着させたこと。「ベートーヴェン未録音ピアノ作品演奏会」、「ヴェルディ・レクイエム」北海道初演など全国に発信する意欲的な事業を実施されたこと。創立50周年記念誌発行に際して当音楽協会の年譜やすべての演奏会プログラムの記録を収められたこと。幕末から明治初期の函館音楽史の調査を進められたこと。市民会館へのチェンバロやパイプオルガンの導入に向けて具体的行動を起こされたこと、等々。どれも容易い仕事ではありませんでした。会長を退かれたあとも創立60周年記念公演「西洋音楽って何」の企画台本を一人でお書きになり、1500年にわたる西洋音楽の流れを生演奏で辿りました。私は先生の下でこれらほとんどの事業に関わることが出来、その時の充実感が今も蘇ります。今から30数年前、清水先生からレナード・B・マイヤーが著した「音楽構造と音楽情動」という当時最先端の音楽理論書を薦められ、私の音楽学研究の指針となりました。また、先生が日曜日ごとの図書館通いで調べられた「函館洋楽事始」の話を何度となく聞かされるうちに、私は「日本人の音感覚」に興味を抱くようになりました。また、先生は優れた批評家でもありました。その的確な指摘にドキッとしたのは私だけではないでしょう。それは常にステージに立つ人への敬意と思いやりに満ちたものでした。清水先生、長い間ありがとうございました。先生がこよなく愛された函館はこんなに音楽の盛んな街となりました。心から感謝申し上げ、哀悼の意を捧げます。[2月25日ご逝去]

評議員 佐々木茂

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