平成19年度函館音楽協会 秋季定期演奏会

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平成19年度函館音楽協会秋季定期演奏会「祝・北海道洞爺湖サミット~ひとあしお先に~音楽でサミット」が11月23日(祝)18時00分より函館市芸術ホールにて開催されました。
今回は、マリンバアンサンブル、チェンバロ、ピアノソロ、2台ピアノ、声楽、フルート、箏曲等10ステージでサミット参加8カ国の音楽が披露されました。


講評を函館音楽協会評議員 清水信勝氏、担当幹事を代表して、秋季定期演奏会担当幹事 石丸典子氏、初出演者 音楽協会会員 森洋子氏 に寄稿してもらいました。


素晴らしきかな《音楽でサミット》
函館音楽協会評議員 清水信勝

 長いこと函館音楽協会にかかわってきましたが、こんなに素晴らしい演奏会は初めて。夢みていた秋季定演の立派な姿が今現れました。これも先頭きってソロ・アンサンブルに見事な演奏を示す市川会長さんと、これをぴったり支える吉田幹事長、さらに副会長・副幹事長・役員ばかりか会員の皆さん全員の見事な結束のおかげです。また高名なチェンバリストの森洋子先生が会員になって下さって、色々な機会に親切にご協力下さっていることも、どれほど函館の演奏者たちの力になっているか分かりません。深く御礼申し上げます。
さてオープニングはイギリスから。会長自ら颯爽と率いるマリンバ「アンサンブル木精」のエルガー「威風堂々」が、小気味よくホール一杯に響きました。
そのコーダが鳴り終るや否や下手より現れたのは、プログラム表紙の万国旗さながら、色とりどりに美しいコンサートドレスのオンパレード。何ごとかとあっけにとられているうちに裳袖を翻して粛々と頭を下げたのは、黒一点を交えた出演者全員の開会ご挨拶。正に華麗なサミット風オープニングセレモニーでした。
プロ第一部はオールジャパン。
第一場は武満徹作曲のチェンバロ作品「夢見る雨」。森洋子先生の見事なご指弾。京都近郊の空を覆う竹林に、閑ずかに、また、しとど降る日本の雨を連想させ、この曲をえらばれた先生のお心根を偲ばせます。
つづいて松石隆さんのチェンバロつきのフルート曲、赤石敏夫作曲「パピヨン」。フルートで活写された蝶は、お茶目でおセンチでとても素敵な妖精。このパピヨンの和名は、もしかしたら「胡蝶」?
第二場は「葱坊主」「この道」「赤とんぼ」。ソプラノ堀川智美さんの清澄なノンビブラート、ブラヴォー。哀切で艶。ピアノ伴奏は畑中佳子さん、ぴたり。
第三場はこれぞ日本。宮崎加奈古師匠ほか二奏者による三箏のための松本雅夫作曲「梢」(こずえ)。風韻。美しいニッポン。
第二部に入って第一場はカナダ。今年来函したボブ・ベッカーの「ATENTEBEN」という曲。再び会長率いる「木精」のマリンバ2台(4奏者)、コンガ、ガンコギ、ボンゴ。土俗的なリズム旋律にあわせ音も眺めも壮観多彩、それを整然と破綻なく、最後まで聴かせました!
第二場ロシア。夏井絵里子さんのピアノでチャイコフスキー「四季」から2月・6月・8月。斬新な感覚。踊る指。ふさわしい深紅のドレス。
第三場ドイツ。ピアノ田村史江さん。久しぶりに聞く「クライスレリアーナ」。内面の安定感と暖かさ深さ。シューマンの色濃く。
第四場イタリア。これは驚いた。メゾソプラノの石丸典子さんの、野心満々、「カタリカタリ」「歌に生き愛に生き」を声量豊かに歌い上げて満場拍手。ピアノ伴奏の後町久子さんも大変乗って。
第五場フランス。第一ピアノ堀内由美子さん、第二ピアノ堀内法子さんの親子水入らずの「デュオKAHLUA」。気持ちも音運びも音色もリズムも1人20本の指から生まれたかのようなシャブリェ「3つのロマンチックワルツ」。
第六場大詰めはアメリカ。出ました大デュエット。「ラプソディインブルー」。言わずと知れたガーシュイン。第一ピアノは石田雅代さん、第二ピアノは畑中佳子さん。つわ者揃いが丁々発止とばかり相撃つスリル満点のデュエット。しかしさすがヴェテラン。各々主張しながら互いに調和するところは、心憎し。
終わって再びオンパレード。今度は何やら手に手に紙包み。ご後援下さった《洞爺湖わかさ芋本舗》さんからの名菓プレゼントだそう。どうも有り難うございました。これで満場大いに沸きました。企画者、演出者の“のり”は正にサミット頂点。最後に、馴れぬ司会に奮闘された中島副会長さんご苦労さんでした。
私も数え年の米寿。祝いの銀盃など手にして独り悦に入っていましたが、それ以上にこのサミットの盃は嬉しく、また光輝いています。演奏会後のパーティーで祝杯をと言われ、感極まって「カンパーィ」と叫んだのはいいが、つい肝心の謝辞を忘れてしまいました。ここに改めて皆さんに心から御礼申しあげ、函館音楽協会の更なる発展を祈って筆を措きます。



平成19年度 函館音楽協会秋季定期演奏会
 

『~ひとあしお先に~音楽でサミット』を振り返って

秋季定期演奏会担当幹事 石丸 典子

 例年になく早くて多い雪に閉口し、灯油・ガソリンが高いと嘆き、気がつけばもう師走。そういえば、時間に追われろくに目も通さずに古新聞と一緒にしていたチラシの束は、おせちとクリスマスケーキやオードブルの予約、年賀状の印刷見本等々だったのですね。この一年の早かったこと!!!しかも、準備が出来ていない時ほど時の過ぎるのが早く感じる、という事を実感した一年でもありました。認めたくはないけれど、一年が早い、と感じるのも老化現象の一つだと何かで見聞きしたような。皆さんにとってのこの一年はどうだったのでしょう!?今から楽しみな今年の忘年会で美味しい料理をいただきながら、お席で隣り合った方にその辺のところを伺いたいものです。
本題に入ります。春季定演からはじまる函館音楽協会最後の行事は秋季定演です。今年は平成19年11月23日、函館市芸術ホールに於いて「音楽でサミット」を開催いたしました。秋季定演は毎年一つのテーマを持って演奏会を構成しています。今回は、来年7月に開催される「北海道洞爺湖サミット」にちなみ、“来年のサミットよりひとあしお先にこの函館の地で、サミットに参加する主要8ヶ国の音楽を函館音楽協会会員で演奏しちゃおう♪”という企画を立てました。今後益々サミットに関連した行事が予想される中で、サミットをテーマにした音楽会を各地に先駆けいち早く開催しよう、という趣旨です。
会員に呼びかけましたら、日本をはじめイギリス・ドイツ・フランスと、積極的な出演希望が次々と届きました。世界の武満のチェンバロ演奏あり、和楽器の代表である箏曲あり、日本の美しい詩と西洋音楽を融合させた山田耕筰の歌曲あり、と充実したプログラム構成が出来つつある中、懸念されたことは、8ヶ国の音楽が全部揃うか否かでした。
一番の課題が「カナダ」。カナダといえば…私の頭の中での連想~メイプルシロップ、楓の葉型のクリームサンドクッキー、赤毛のアン、カナディアンブラス、以上!(少なッ!!)。音楽家が出てこない…サミットなのにG8が揃わなければ企画倒れだ~、と意気消沈していたところに市川会長より天のひと声が。今年9月に芸術ホールで開催された「打楽器の世界」で来函し、素晴らしい演奏を披露したボブ・ベッカーは何とカナダ人で、彼自身の作品もその時演奏したとの事。ボブの曲をアンサンブル木精が演奏してくださるということで、思わずガッツポーズ!そんなこんなでやっと全部の国が揃った次第です。
ところで、洞爺湖といえば、温泉、有珠山噴火、そして「わかさいも」!洞爺湖サミットに関する音楽会で何かもっとオプションを、と考えた時、お客様に洞爺湖銘菓「わかさいも」をプレゼントしたらどんなに喜ばれるかしら、と思ったのです。今やどこででも手に入る親しみのあるお菓子ですが、私共がデパートで買ってプレゼントしたのでは全然面白くない、ちゃんとわかさいも本舗さんに演奏会の趣旨をお伝えし協賛していただけたら素晴らしい、と思い、恐る恐る企画室長様に申し出ましたところ、「会長より是非ご協力するように、とのことでした」という返答が!!!ホントに門を叩けば開かれるものなのですねぇ。かくして、届いたわかさいもが演奏会当日、全てのプログラムが終了した後にサプライズとして20名様のお客様にプレゼントされたのでした。
また、函館音楽協会主催の音楽会としては、初めてオープニングとフィナーレを設定し、いずれも出演者が総出演し、一列に並んだ演出は祭典色にあふれ華やかで、大変好評でした。特に、6台のマリンバによる迫力溢れるエルガー(英)「威風堂々」でステージに出演者が登場したオープニングは、かの有名なプロミスコンサートを彷彿とさせた、との声も。来年はまた何を企画立案しましょうか。今後も是非秋定に注目してくださいね♪



函館音楽協会 定期演奏会に参加して

函館音楽協会会員 森 洋子

 函館に住み始めて一年半、函館音楽協会の会員として初めて11月23日の秋季定期演奏会に出演させていただきました。音楽協会への出演は過去に「通奏低音奏法」の講座へ講師として、また、昨年は70周年という記念すべき演奏会にゲストとしてお招きいただきましたが、今回、会員となっての出演は自分の活動を新たな角度から考える良い機会になりました。また、函館の音楽シーンをリードする優秀な演奏家の方々と同じステージに立たせていただいて新鮮な刺激を受け、大きな励みになりました。
 日頃は、仕事として依頼されるもの、また自主企画のものであれ、演奏曲目、本番の構成は自分に任されていることが多いので、大勢の方と一つのステージを作ることは全く別のエネルギーを必要とするのだなと思いました。今回、洞爺湖サミットに先駆けて、サミット参加国の作品というテーマが設定されていたことは一つのステージの枠組をはっきりさせる点で大変良かったと思いました。
 私は今回、チェンバロソロで武満徹「夢見る雨」、フルートの松石隆さんとの共演で赤石敏夫「パピヨン」という二曲の現代曲を演奏しましたが、バロックの作品ではなく邦人の現代作品を選んだ理由には、普段のプログラムでは構成上なかなか難しい点があり、このようなテーマに応じる上での自分自身へのチャレンジをしたかったことが一つ、また、チェンバロという楽器が過去の遺物ではなく、現代の日本においてもリアルで説得力ある作品を生み出す楽器として機能していることを知っていただきたかったことの二つがありました。
 今回の秋季定期演奏会では、邦人作品のエントリが他にも二組あり、こういう機会に邦人作品を聴いていただくことはとても意義のあることだと思いましたし、全体のプログラム構成からもバランスの取れたものになったことは良かったと思います。日本人としての音楽観というのは普段当然の前提として、あまり意識されていないものかもしれませんが、こうして、キャラクターの違う作品を並べて聴くのは良い機会でした。
 そして、各国の様々な作品から、そのお国ぶりに思いを馳せながら聴くことは聴衆にとっても飽きずに興味を持って楽しんでいただけたのではないかと思います。
 最後になりましたが、企画、運営、当日の進行等を担ってくださった幹事の皆様、また、共演の演奏者の方々、聴衆の皆様に感謝を致したいと思います。ありがとうございました。



祝・北海道洞爺湖サミット
~ひとあしお先に~音楽でサミット
■日時/2007年11月23日(祝・金) 開場17:30 開演18・00
■場所/函館市芸術ホール(ハーモニー五稜郭)
■料金/一般1,000円 学生700円
■主催/函館音楽協会
■出演/
アンサンブル木精(マリンバ)、石田雅代(p)、石丸典子(Ms)、市川須磨子(マリンバ)、後町久子(p)、田村史江(p)、内藤伸子(箏)、夏井絵里子(p)、畑中佳子(p)、平野智晴(箏)、堀川智美(S)、堀内法子(p)、堀内由美子(p)、松石 隆(fl)、宮崎加奈古(箏)、森 洋子(cemb)
■プログラム/
エルガー:《威風堂々》第1番 ニ長調Op.39-1/アンサンブル木精(市川須磨子 寺澤春佳 波多真菜美 鎧谷由里菜 高盛陽子 滝本千晶(mar) 大友昌壽 丸山陽平 西里和幸(per))
武満 徹:夢見る雨~ハープシコードのための/森洋子(cem)
赤石敏夫:フルートとハープシコードのための音楽《パピヨン》/松石隆(fl) 森洋子(cem)
山田耕作:《童謡百曲選》~《葱坊主》《この道》《赤とんぼ》/堀川智美(S) 畑中佳子(p)
松本雅夫:箏三重奏《梢》/宮崎加奈古 平野智晴 内藤伸子(箏)
ボブ・ベッカー:ATENTEBEN/アンサンブル木精(市川須磨子 波多真菜美 滝本千晶 寺澤春佳(mar) 和田洋子(conga) 大友昌壽(bongo) 丸山陽平(gankogui))
チャイコフスキー:《四季》Op.37~2月謝肉祭、6月舟歌、8月取り入れ/夏井絵里子(p)
シューマン:クライスレリアーナ Op.16~第1曲、第3曲、第7曲/田村史江(p)
カルディルロ:カタリ カタリ
プッチーニ:《トスカ》~《歌に生き愛に生き》/石丸典子(MS) 後町久子(p)
シャブリエ:3つのロマンティックワルツ/デュオ KAHLUA (堀内由美子 堀内法子(p))
ガーシュイン:ラプソディ・イン・ブルー/石田雅代 畑中佳子(p)
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